ゆうさんの本棚

僕が読んだ本についてまとめた記事です。10分程度で読めるので気軽にお立ち寄りください。

#4「CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見」

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遺伝子、と聞いて何を想像するでしょうか。

遺伝するものが遺伝子です。そのままですね(^-^;

遺伝とは親の性質が子に受け継がれることです。親が黒髪なら子どもも黒髪になる、というのが遺伝ですね。

ただし親の運動神経が悪いからといっても子どもまで運動神経が悪くなるとは限りません。

筋肉の付き方だったり、神経回路だったり、体の構造的な部分は遺伝するので、子どもの運動神経が悪くなる可能性は十分にありますが、必ずしも運動神経が悪くなるわけではないです。

さて、遺伝子ですがその編集技術も大きく進歩しています。

今回は「CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見(ジェニファー・ダウドナ著、サミュエル・スタンバーグ、櫻井祐子訳、須田桃子解説、文藝春秋)」をもとに最新の遺伝子編集技術、そしてその遺伝子編集技術の発見者である著者の期待と懸念をまとめました。

著者であるジェニファー・ダウドナは2020年に画期的な遺伝子編集技術である「CRISPR-cas9」を発見したとしてノーベル化学賞を受賞しています。

おこの本は専門書であるため、ある程度遺伝子編集に携わっていないとなかなか読みこむのが難しいです。そのため、今回はざっくりと遺伝子とは何かを説明した後に、遺伝子編集技術について触れ、その後に期待と懸念についてまとめていきます。

 

 
 遺伝子とは何か

 さて、内容に入る前に遺伝子とは何かを説明します。

遺伝子と一般的にいわれているのは「DNA(デオキシリボ核酸)」という物質です。

僕ら生物は基本的には両親からこの「DNA」を半分ずつ受け継いで、それをもとに身体が作られています。

正確にいうと、親から子への遺伝は「DNA」だけで説明できない部分も多いのですが(^-^;

僕が遺伝子としての「DNA」を説明する時に例えるのは、「船の設計図」です。

それも外観、内装、エンジンの数、部屋数、厨房数、スタッフの数、スタッフの種類などなどが事細かく詳細に描かれたものです。

「DNA」はこの船の設計図のようにものすごく細かいところまで書かれている設計図です。

そして、その設計図は人によって違います。

外観は豪華がいいのか、シンプルなものがいいのか。
大型客船か小型漁船か。
部屋の数は多いのか、少ないのか。
その部屋数の割り当てはどうなっているのか。
航海士が多いのか、厨房のシェフが多いのか。

これらの要素が船によって千差万別なのと同じように、人によっても千差万別です。

僕らの身体、つまり船はその設計図をもとにして作られているのです。

さて、「DNA」についてざっくり説明したので、次は本の中身を見ていきましょう。

開発

「CRISPR(クリスパー)」とは一言でいうと、遺伝子編集技術です。きちんと書くとあまりにも専門的になるので、詳しく知りたい方はこの本を購入するなり、他の文献やホームページを見て下さい(詳しく知ろうとしてこの記事を読んでいる方がいらっしゃったら、申し訳ないです)。
遺伝子編集とは、先ほどの「船の設計図」を書き換えたり、書き足したり、または書き消したりする技術のことです
例えば、
  • この船にもう一部屋追加しよう。
  • 客室の一部を乗員用の部屋に変更しようかな。
  • 窓を10個ほど削ろう。
といった行為が遺伝子編集です。
「CRISPR」とは元々とある細菌が持っていた防御機構のひとつでした。
ファージと呼ばれる細菌のみに感染するウイルスがいます。ファージは自身のDNAを細菌の中に注入し、細菌自身の力によって、自身のDNAを増やします。そしてある程度増えたところで細菌を殺してファージは外に飛び出します。これを繰り返すことでファージは増えていきます。
当然のことながら細菌はファージに感染したくないので、防御機能としてファージのDNAを切断する機能を持っています。そのひとつが「CRISPR」です。
遺伝子は4種類のDNAと呼ばれる物質がランダムに並んだ構造をしているのですが、「CRISPR」は本来はファージ特異的、つまりファージにしか存在しない並びを認識して切断します。
このファージにしか存在しない並びを照合、認識しているものがあり、「CRISPR」のその部分をいじってやればどんな並びでも切断して、編集することができます。
「CRISPR」が発見され、研究目的で使用できるように研究・開発し、普及していくまでにも様々な遺伝子編集技術はありました。しかし、どれも簡便にはできませんでした。コストもけっこうかかりました。
しかし、「CRISPR」は簡単に誰でも安く遺伝子編集を行うことが可能となりました。

応用

「CRISPR」が画期的な遺伝子編集技術として世に出回ると様々なものに使用されてきました。

例えば遺伝子編集作物の作成です。

うどんこ病抵抗性オオムギ、除草剤に自然耐性をもつトウモロコシやダイズ、ジャガイモなどが「CRISPR」の技術を利用して生み出されました。

遺伝子編集技術を利用して健康に害のある物質を生産できないようにした作物も作成されました。

遺伝子編集による作物の改良は、収穫量の増加や抗菌、抗ウイルスなどをもたらし、環境面、経済面において大きなメリットになります。

また近い将来、遺伝子編集技術は家畜の品種改良にも利用されるかもしれません。

例えば商用化が近い家畜の例としては、筋肉ムキムキの牛や羊(赤身肉が通常の牛や羊よりも多い)、除角の苦しみを抑えるために角をそもそも持たない牛などが存在します。

なおここまで述べた植物や家畜の例は自然に起こる変異を人工的に促しているだけです。そのため莫大な時間さえあれば自然に発生する可能性も十分にあります。

しかし、遺伝子編集技術により自然発生しない生物を生み出すことも可能になりました。

例えば、ヒトへの臓器移植を目的としてヒトの臓器を持ったブタについての研究が行われています。

あなたが将来病気になった時に、あなたの臓器を持ったブタから心臓や肺などを移植することが可能になるかもしれません。

また、CRISPRはヒトの遺伝子治療にも十分な応用が可能です。生まれてくる子どもについても、受精卵の際にDNAを調べてそのDNAに病気の原因となるものが見つかった場合(船の設計図で例えるとエンジンの不良など)、その遺伝子を書き換えてからまた母体に戻すことで生まれてきた子が病気を持たずに健康的に成長し、生涯を全うすることが可能となります。

また他の技術と組み合わせれば、体内での治療も可能となります。つまり、成人した大人でも注射によって「CRISPR」を体内に入れ、原因遺伝子を修正し、病気を治すことが可能となります。

しかし、自然発生しない動植物を生み出す場合やヒトに使用する場合には大きな懸念や不安が存在します。

遺伝子編集で病気を治すことができるということは、遺伝子編集により望まれた性質を持った人間を生み出すことが可能であるということです。

例えば、あなたが子どもを将来オリンピック選手に育てたいと思った場合、生まれてくる子どもは運動神経が良く、体格が恵まれている方が良いと考えるかもしれません。

遺伝子編集技術を使用すればそのような子どもを生まれさせることは可能です。あなたが望んだとおりに子どもを作成することができるのです。

当然、ヒトに対してこのようなことを行うことは禁止されています。しかし、様々な国が秘密裏に行っていないという保証はありません(生物には未知な部分も多いため、今日明日でできることではありませんが、専門に研究を進めていけば近い将来不可能ではないでしょう)。

最後に

ちまたで遺伝子組み換え作物などが騒がれていますが、遺伝子に携わっていた僕としては大きな問題はないと思っています。遺伝子編集の多くは自然に起こる変異を人工的に促しているだけなので。

しかし、自然に起こる変異を逸脱した行為については疑問に思います。

遺伝子編集に限らず人間は神になる技術を手に入れようとしています。

人間の望むように様々な生物を改良する技術を手に入れた、または手に入れようとしています。

果たしてそれはいいことなのか、これを読んだ方には考えて欲しいです。

今回は遺伝子編集についての書籍をまとめたため、専門性が高く、読んでいてよくわからないという方もいたと思います。極力わかりやすく読めるようにこころがけましたが、それでもわからないところはあったと思います。またかみ砕きすぎたところもあったでしょう。もし遺伝子編集などに興味を持ったら自分で調べてみてください。奥が深すぎて、気をつけないと泥沼にはまりますが(笑)。

疑問に思ったところなどは僕に聞いていただいたら頑張って回答します!!

それではここまで読んで下さってありがとうございました(*´ω`)